先日造形大の授業でライティングの基礎を学びました。普通たまに目にするカメラの上に載せるフラッシュではなく、『オフフラッシュ』と呼ばれる手法で、カメラから離したライティングを学びました。授業の目的は、適切に的確なライティングをすることでした。的確とは、思った通りの明るさを得ること、適切とは、思った通りの�質のひかりをつくること。簡単に言って仕舞えばライティングを学ぶとは、この2つを学ぶことだと思います。
授業は論理的で、露出計で毎回明るさを計測し被写体のどこがどのくらいの明るさかを把握すること。被写体だけでなく背景も測定し明るさを把握します。構図全体でどのくらいの明暗差があるとどういう印象になるか、歴史的写真家が撮影したポートレートは、どのような明るさの分布になっているのか、そんな視点で実習をしながら1日目を終えました。
2日目も発展させた形式で同じような実習を行いました。そして最終課題に取りかかります。
これまでの被写体はマネキンだったのですが、最終課題は生きている人間に変更されました。モデルは生徒が交代で行います。この最終課題が自分にとって衝撃だったのです。
衝撃だった、言い換えればショックだったということです。ここまで撮れないのか、、と自分の実力を思い知った出来事でした。
少し状況を説明すると、最終課題の一人の撮影持ち時間は20分ほどでした。時間内にセッティングをし、撮影を終える必要があります。私は、とにかく思いついたライティングのセッティングを行い、すぐ撮影を開始しました。自分のイメージにあったモデルさんを動かして、表情を引き出して、瞬間を切り取ろうとシャッターを何度も押し制限時間を迎えました。その結果は、とにかく納得の行くものでなかったのです。
日本でポートレートというと若い女の子がニコッと笑っている写真をさすことが多いと思います。googleで「ポートレート」と検索したら、若い女の子の笑顔が数え切れない数出現してきます。課題に取り組んでいた時の自分は、この「若い女の子を撮影する」スタイルしかイメージがなかったのです。私が今回の課題で撮影したのは、ミドルエイジの男性。無理やり笑顔を要求しても、やはりうまく行かないことは今思えば当然でした。
私はポートレートを撮るなら、様々な年齢、容姿の、老若男女を撮影したいと思っています。若くてかわいい女の子なら、そのまま撮影すればなんとかなると思いますが、男性には男性の魅力、年配者にはおちついた魅力があるはずです。モデルの良い部分を見極めて、ポートレートでその魅力を引き出す、そんなことができるようになりたいものです。
課題撮影で、自分の実力のなさを痛感し家路につきました。ポートレート撮影が上手くできるようになるにはどうしたら良いのか?しばらくそのことばかりを考えています。人が人の顔を撮影するという行為は、写真撮影でも特別なものです。人は人の顔にとにかく惹きつけられるのです。ポートレートは、撮る側と撮られる側の、2者間の関係性がとても重要です。いかにうまくコミュニケーションをとっていくか。撮影以外の能力も必要になってきます。
しかし自分の場合には、まずは技術的に足りないことを補うということ。まずはそこからです。
モデルのチャームポイントを短時間で見抜くこと。見つけ出したチャームポイントを伝えるのに、どのようなライティングで撮影するのが効果的か即座に判断すること。そんな能力が求められています。自分がやるべきことは、あらゆるタイプの人物をどうやったら的確に撮影できるのか、イメージを蓄えることが必要だと思いました。
そこで、世間で名作と言われている写真集を購入し、じっくりと写真を見つめることからはじめようと思います。今まで視ているようで見えていなかった、人の顔を切り取り方やシャドウの作り方、光の質、様々な人物のそれぞれの魅力の捉え方など、まずはよく視ることからはじめます。
人が人の顔を撮るという特別な行為を、これだけですぐできるようになるとは到底思えませんが、まずは始めないと進歩はありません。そう自分に言い聞かし、これからしばらくポートレートをテーマに勉強していきたいと思います。
「綺麗なものを綺麗に撮りたい」という思考になりがちなのですが、見落としている事柄の中に隠れている美しさを、視点を変えて発見していくことが写真の本質のひとつであると思います。
ポートレート写真と向き合うことで、そのことがまた思い返されました。